はじめに

子育ての道のりは平らではありません。しかし、イヤイヤ期はその中でも特に試練の多い時期と言えるでしょう。この時期は親子双方にとって大変ですが、乗り越えることで双方が成長できる貴重な機会でもあります。本記事では、イヤイヤ期への理解を深め、うまく乗り越えるためのヒントをご紹介します。

イヤイヤ期とは

イヤイヤ期は、子どもが自我を芽生え始める1歳半頃から3歳頃までの時期を指します。この時期、子どもは自立心が高まり、自分の意思を強く主張するようになります。しかし、言葉で上手く表現できないことから、「イヤ!」「ダメ!」と拒否的な態度を取ることが多くなります。

自我の目覚め

イヤイヤ期は、子どもが自分の存在に気づき始める重要な時期です。これまで親に従順だった子どもが、突然反抗的になるのはこのためです。子どもは自分の意志を持ち始め、自分でものごとを決めたいと思うようになります。

この時期は、子どもの人格形成の基礎が作られる大切な時期です。親はこの自我の芽生えを受け入れ、子どもの自立を後押ししていく必要があります。一方的に制止するのではなく、子どもの気持ちに寄り添い、適切に導いていくことが肝心です。

言語能力の未熟さ

イヤイヤ期の子どもは、自分の気持ちを言葉で上手く表せません。言語能力が未熟なため、拒否の気持ちを「イヤ!」という一言で表現してしまうのです。親はこの「イヤ!」の背景にある本当の気持ちを汲み取る努力が必要になります。

子どもの気持ちを代弁したり、絵カードなどを使って気持ちを確認したりすると、コミュニケーションがスムーズになります。言葉で伝えきれない気持ちを、親が代わりに言語化することで、子どもの気持ちが整理され、落ち着くことができます。

脳の発達

イヤイヤ期の子どもの行動は、脳の発達の過程にも起因しています。この時期、子どもの前頭前野(感情コントロールの脳領域)が未発達なため、自分の気持ちをコントロールするのが難しくなります。そのため、些細なことで大きな感情の起伏を体験することになるのです。

大人から見れば理不尽に映る子どもの行動も、発達段階を考えればごく自然なことだと分かります。親が子どもの発達過程を理解し、寄り添うことが大切なのです。時間の経過とともに、脳が発達し、子どもの自己コントロール能力も高まっていきます。

イヤイヤ期への対処法

イヤイヤ期は親子双方にとってストレスの多い時期ですが、適切な対処法があれば乗り越えられます。子どもの気持ちを受け止め、寄り添いながら、ていねいに関わることが何より大切です。

子どもの気持ちを受け止める

イヤイヤ期の子どもに一番大切なのは、親が子どもの気持ちを受け止めることです。子どもの拒否の気持ちを無視したり、強制的に従わせたりするのは逆効果です。まずは子どもの気持ちに共感し、受け入れる姿勢が必要不可欠です。

「○○したくないんだね」「○○は嫌なのかな」と、子どもの気持ちを言葉にすることで、子どもは自分の思いが親に伝わったと安心感を覚えます。子どもの気持ちを受け止めた上で、次の対応を検討しましょう。

代替案を提示する

子どもがイヤイヤを言っているときは、別の選択肢を提示することで、気分転換を図ることができます。例えば、「公園に行きたくない?」「おうちで○○しよう」などと提案してみましょう。子どもに選択の余地を与えることで、イヤイヤが収まる可能性が高まります。

複数の選択肢を用意しておくと、子どもの気持ちの変化に柔軟に対応できます。さらに、子どもに選ばせることで、自立心も育まれます。親の一方的な決め付けではなく、子どもの意思を尊重することが大切なのです。

気分転換を図る

イヤイヤが激しい場合は、一時的に別の場所や活動に移ることで、子どもの気分転換を図りましょう。散歩に連れ出したり、絵本を読んだり、好きなおもちゃで遊ばせたりすると、子どもの注意が別のところに向き、落ち着くことができます。

場所を変えることで、子どものイヤイヤモードがリセットされ、新しい気持ちで前に進めるようになります。時と場合によっては、無理にイヤイヤを止めさせるのではなく、子どもの気持ちに合わせて対応することも大切です。

親自身のメンタルヘルスケア

イヤイヤ期の子育ては、親にとってもストレスがかかります。しかし、親自身のメンタルヘルスに気をつけることが何より大切です。親がイライラしても、子どもをしかることはできません。むしろ、親が冷静でいられることが、子どもの心の安定にもつながります。

自分の時間を作る

子育てに追われ、自分の時間が持てないと、ストレスがたまりがちです。イヤイヤ期の子育ても、ある程度の息抜きが必要不可欠です。近くの人に子どもを預けて、自分の趣味の時間を作ったり、友人と息抜きの機会を作ったりすることをおすすめします。

自分の時間を作ることで、気持ちのリフレッシュができます。そうすることで、子育てに穏やかな心で向き合えるようになり、イライラしにくくなるはずです。ささやかな時間でも、自分をいたわる大切な時間になります。

ストレス発散の方法を見つける

親が常にイライラしていては、子育てに悪影響を及ぼします。ストレスを適切に発散する方法を見つけることが重要です。運動したり、ヨガをするなど、自分に合った方法を見つけましょう。

家族や友人に話を聞いてもらうことも、ストレス解消の一つの方法です。子育ての辛さを共有し、アドバイスをもらうことで、気持ちが軽くなることでしょう。一人で抱え込まず、支援者を見つけることが大切なのです。

専門家に相談する

イヤイヤ期への対処に行き詰まったら、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。児童心理の専門家や発達障害の専門家に、適切なアドバイスをもらえます。また、カウンセリングを受けたり、親子で療育の場を利用したりすることで、新しい視点が得られる可能性があります。

専門家に相談するメリット

専門家に相談することで、以下のようなメリットが期待できます。

• 子どもの発達段階を正しく理解できる
• 子どもの行動の背景にある気持ちが分かる
• 適切な対処法やコミュニケーション方法を学べる
• 自分自身の子育て方を見直すきっかけになる

子育ては試行錯誤の連続です。専門家のアドバイスを参考にしながら、自分に合った方法を見つけていくことが大切なのです。

子育て支援サービスの活用

最近は、イヤイヤ期の子育てを支援するサービスが増えてきました。一時預かりサービスやファミリーサポートセンター、ベビーシッターの利用など、気軽に利用できるサービスがあります。

子育ての負担を少しでも軽減するために、地域の支援サービスを上手に活用することをおすすめします。そうすれば、気分転換ができ、リフレッシュした気持ちで再び子育てに臨めるはずです。

まとめ

イヤイヤ期は子育ての中で避けられない大きな試練ですが、乗り越えることで、子どもも親も成長できる貴重な機会です。子どもの気持ちに共感し、寄り添いながら、ていねいに接していくことが何より大切です。

同時に、親自身のメンタルヘルスケアを怠らないことも重要です。自分の時間を作り、ストレス発散の方法を見つけましょう。行き詰まったら、一人で抱え込まず、専門家に相談するなど、周りの支援を活用してください。

イヤイヤ期は一時的なものです。この時期を乗り越えれば、子どもの自立心も育ち、親子のコミュニケーションも深まります。大変な時期だからこそ、親子の絆が深まる機会なのかもしれません。子育ての喜びを感じながら、この時期を乗り越えていきましょう。